富士登山2025(富士宮ルート)

人生6度目の富士登山。

今年は初の『富士宮ルート』で登ってきました。全部で4つある富士山のコースの中で、最短で山頂までたどり着けるコースです。

富士登山オフィシャルサイトより

標高差が1,300m(5合目:2,400m → 山頂:3,776m)一般コースタイムは上りが5時間、下りが3時間ほどです。

さて、たびたびニュースで取り上げられるように、様々な問題の影響で毎年ルールが変わりますが、今年からはさらに大幅変更。

主に2点。1点目が入山料(4,000円)がかかるようになったこと。今までは協力金(任意)という形で1,000円支払っていましたが、今年からは4,000円の支払い義務が発生します。全ルート適用です。支払いは現地でもできますが、手続きに時間がかかるので、ネットで事前決済しておくことを強く勧めます。

2点目が事前に入山許可証を取得する必要があること。と言っても厳しい条件があるわけではなく、ネットで10分ほどの動画を見て、ミニテストを受けます。それに合格すると入山許可証が取得できます。スマホに表示されるQRコードを登山口で係の人に見せればOKです。現地で慌てないように事前にスクショしておきましょう。

富士宮ルートは一日の登山人数に規制をかけていないので、先ほどの2点をクリアしていれば登ることはできます。なお、マイカー規制がされているため、5合目の登山口まではシャトルバスで移動する形となります。

3:45 水ヶ塚公園駐車場に到着。こちらがシャトルバスの発着所になっています。駐車料金は1,500円。到着時は3割くらいの駐車率でした。人気のコースなので早めに着くことをオススメします。

5:00が始発です。結構並びますので、最低でも30分前には並んでいたほうが良いです。なお、夏でも朝は極寒なので防寒着を着て並ぶことをオススメします。料金は往復2,400円です。

入山料(4,000円)、駐車料金(1,500円)、バス代(2,400円)で計7,900円。これが最低ラインなので、なかなかリッチな登山になりました。

バスに揺られること1時間、登山口に到着。休憩小屋やお手洗い(無料)があります。これより先のお手洗いは有料なので、出すものは全部出していきましょう。

5:50 登山開始です。すでに標高2,400mほどありますので、その辺の山の山頂よりも圧倒的に高い場所にいます。当然、酸素は薄いので、体質によっては頭痛や吐き気などの高所の影響が出る方もいます。バスで一気に上がってきたこともあって、まだ体は高所に慣れていません。休憩小屋がありますので、自信のない方は、30分〜1時間ほどは栄養補給やストレッチをして体を慣らすことをオススメします。

昨年に引き続き、今回もビブラムファイブフィンガーズです。砂が入りやすいのでゲイター(カバー)を付けました。

石が多いだけで、決して難しいコースではありません。また、御殿場ルートのように砂ではないので歩きやすい。富士山攻略のコツは、全体を通して『亀』のようにゆっくり歩くことです。特に序盤は「これ以上遅く歩けない!」くらいのペースで歩くようにします。後ろから抜かされても気にしないように。むしろ、最後尾を歩くくらいのスローペースで登ります。この理由は後ほど分かります。

しばらく登ると、正面から朝陽が昇ってきました。富士宮ルートは南に位置しているので、太陽を正面に見ることになります(ジグザグ登るので)。

6:46 新7合目に到着。食料をパンパンに詰め込んできました。まずはおにぎりから食べます。重さがあるので、固形物はなるべく早い段階で食べるようにしています(総重量は変わらないんでしょうけど)。また、後半になると、疲れてきたり、口の中が乾いてきたりするので、固形物が食べにくくなります。なので、おにぎりは早い段階で食べます。消化吸収に数時間かかるので、早い段階で食べておけば、エネルギーの枯渇しやすい後半にちょうどエネルギーとして使われるので、そういう意味でもこのタイミングで食べるのは理にかなっていると思います。

ちなみにバスに乗る前にもおにぎりを食べています。それから2時間ほどは経っているので、ちょうどその時食べたおにぎりがエネルギーとして使われはじめる頃でしょう。水分補給は「喉が渇いてから飲むのじゃ遅い」と言われますが、食事も同じで「お腹が空いてから食べるのじゃ遅い」と考えています。喉が渇いてなくても、お腹が空いてなくても、口にするようにします。ガソリン(エネルギー)を切らさないことが大事です。

5分ほど休憩して出発。そう、お伝えし忘れましたが、富士宮ルートは『登山道と下山道が同じ』です。他のルートは、混雑を避けるために別々になっているのですが、富士宮ルートだけは同じになっています。なので、登る人と下りる人がすれ違う形になります。ちゃんと挨拶をすることや、譲り合いの精神が大切になります。

基本的なマナーとしては『登る人が優先』ですが、急かしてしまうことになるので、そこは声を掛け合ったりして臨機応変に対応します。ただでさえキツい富士登山ですから、少しでもみんなが気分良く登りたいですね。

7:27 元祖7合目に到着。「8合目じゃないんかい!」とツッコミたくなるのは富士山のお決まり。ちょうど標高3,000m付近です。

さて、登山口から亀のようにゆっくり歩いてきました。そして、気付けばほぼ先頭にいました。他人と競うわけではありませんが、序盤で僕のことを抜いていった人たちは、早い段階でペースが落ちていました。大汗をかいて立ち止まっていたり、座り込んでいたり、まだ中盤なのにとても辛そうでした。

他人の登山を観察するようで申し訳ないのですが、これは富士山を攻略する上でとても大切な事実です。バスから降りて、登り始めというのは、一番体力があってフレッシュな状態です。なので、どうしてもペースが速くなりがちです。多くの人が、街中を歩いているのと同じようなスピードで登り始めてしまう。これが後半に失速する原因です。特に富士山は標高が上がるにつれて酸素濃度が下がりますので、その影響が顕著に現れます。

また、速く歩くと歩幅が大きくなりがちです。歩幅が大きくなるということは、それだけ筋肉やエネルギーを消耗する歩き方になります。よく「パワーウォーク」というウォーキング法がありますね。腕を大きく振って、大股で歩く方法です。ダイエットや持久力アップには良いのですが、歩幅が大きくなるということは、それと似たことをしているということです。

また、登山のような有酸素要素の強いスポーツでは、筋肉を使えば使うほど酸素を大量消費します。空気の薄い富士山ではそれは大きな負担となります。また、歩幅が大きい人は、小さな段差ではなく、大きな段差をヨイショ!と登る傾向があります。すると、また筋肉を使わなければなりませんので、体が酸素を必要とします。

このように、速く歩けば歩くほど、歩幅が大きければ大きいほど酸素を必要とし、また呼吸も浅くなる傾向があるので、それが『高山病』へと繋がっていきます。面白いのが、体力に自信がありそうな若い男性や、日々トレーニングをしているであろう筋肉がしっかりとした男性よりも、小柄な女性や登山の経験を積んでいる高齢者のほうが、いい感じに登れているということです。

登山、特に富士山のような高所登山では、歩き方を日常モードから『登山モード』にスイッチを切り替えることが大事です。「亀のようにゆっくり歩く」が富士山攻略の鍵なのです。

8:00 8合目に到着。個人差はありますが、僕はこの辺りから『(酸素の影響で)体が重くなってきたな』と感じやすいので、呼吸とペースを意識しながら、さらにゆっくり登るようにしています。

酸素飽和度の測定

今回も血中酸素飽和度を測定するためにパルスオキシメーターを持ってきました。「少し苦しいな」と感じる時に測定すると、だいたい低い数値になっています。下界では90%を下回ると「呼吸不全」の判定となり、救急車を呼ぶレベルではありますが、富士山では70%、80%が当たり前の世界になってきます。できるだけそうならないようには気を付けてはいますが、どうしてもそうなってしまう場合がある。その時に、歩行速度を見直したり、呼吸を整えたりすることが大切です。

僕の例で言えば、苦しい時というのは、だいたい歩き方が雑になってきた時です。自分の中では丁寧に歩いているつもりでも、恐らく客観的に見た時にはペースが速かったり、大股歩きになっているんだと思います。この「客観的に自分を見る」というのが難しいんですよね。ソロ登山なら尚更です。

『酸素スプレーは必要か?』とよく聞かれることがありますが、個人的にはNOです。「それは体力があるからですよー!」とも言われますが、そうではありません。吸っている時だけしか効果がないからです。エベレストを登る映像を見たことがあるでしょうか。酸素ボンベを背中に担いで、口に吸入器を装着しながら登っているシーンがあります。その場合は、常に酸素が体内に供給される形で登っているわけです。

しかし、酸素スプレーはそうではありません。常に口に装着して登るわけではありません。小屋の前で一休みしながら吸う方がほとんどかと思います。一時的に体をラクにする効果はありますが、持続的な効果はありません。酸素の吸い溜めはできないからです。あまりに苦しかったり、頭痛や吐き気といった症状が出た時に使うものだと考えています。ただし、一時的に症状はおさまっても、再び登り始めるとまた同じ症状が出るかと思いますので、そこまでして登るのはあまり賢明な判断とは私は思いません。(買ってはダメ、という意味ではありません)

酸素スプレーは1,500円ほどしますので、それなら水を3本買ったほうが良いです(1本300 ~ 500円ほど)。というのも、体内で酸素を運搬するのは『血液』だからです。標高が上がるほど体は乾燥し、血液もドロドロになりやすくなるので、酸素の運搬能力が低下します。水分補給をこまめにすることで血液循環を促し、体内の組織に酸素を運搬することができます。

富士山は気温が低いので、喉の渇きに気付きにくいのが難点です。喉が渇いていなくてもこまめに水分補給をすることが、高山病対策には重要です。

8:30 9合目に到着。山頂までもう少しです。

9:00 9合5勺に到着。各小屋ごとのタイムが30分〜1時間刻みなので、時間管理がしやすくて良いですね。

9:30 山頂に到着しました。浅間大社奥宮が鎮座しています。このまま日本最高地点の『剣ヶ峰』に向かいます。富士宮ルートからが最短なのも嬉しいですね。

10:00 日本最高地点『剣ヶ峰』に到着しました。いつ登っても最高の瞬間です。

小屋でラーメンでもいただこうかと思いましたが、食料が余りすぎていたので、そのままここで食べることに。後から登ってくる人の達成感に満ちた表情を見るのが良いですね。ほっこりします。

八ヶ岳と南アルプス

過去一番の好天に恵まれました。晴れていれば半袖短パンでも問題ありませんが、太陽との距離が近いので、瞬く間に日焼けします(絶賛脱皮中です)特に首の後ろが盲点なので、タオルでガードするなどして対策したほうが良いですね。

せっかく山頂まで登ったんだからゆっくりしたいところですが、山は時間が経てば経つほど天気が崩れやすいので、できるだけ早く下山するように心掛けています。

先ほどの浅間大社奥宮まで戻ります。中に入ると拝殿があります。富士山そのものが御神体となっているため本殿はありません。荷物はすべて下ろし、帽子も脱ぎ、登らせていただいたことに感謝の気持ちをお伝えします。

御祭神は木花之佐久夜毘売(コノハナノサクヤビメ)です。日本一美しい神様とされています。古事記では天孫降臨の章で登場。父親が大山祇神(オオヤマツミノカミ)で、姉に磐長姫(イワナガヒメ)がいます。サクヤビメは美人だけど短命、イワナガヒメはブサイクだけど岩のように永遠の命を持つ、と描かれています。

天照大神の孫である瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)が天から地上に降りた際に(天孫降臨)、サクヤビメに惚れて結婚するというシーンがあります。その際に、サクヤビメの父である大山祇神から「一緒に姉のイワナガヒメもお願いします」という流れになり、ニニギが「いやいやブスは結構です!」と断ります。それに怒った大山祇神が「永遠の命を持つ娘を断るなど許せない!」と怒り、それまで寿命という概念が無かった神々に寿命をお与えになった、という話です。

富士山山頂限定でお受けできるご朱印帳。今回から『富士山専用のご朱印帳』にします。

また最近、神棚をお祀りするようになったので、今回の富士登山からはお神札もお受けすることにしました。神棚(宮形)の左側は『崇敬神社』と呼ばれ、個人的にご縁を結んでいきたい神様をお祀りします。富士山は日本の象徴であり、また日々の力強さを与えてくれます。今後とも良いご縁を結んでいきたいので崇敬神社としてお祀りさせていただくことにしました。

ちなみに数年前に、鹿児島の霧島神宮でお受けしたお守りを身に付けているのですが「瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)」が祀られています。そして、奥さんが富士山の神様である木花之佐久夜毘売なのです。お守りとお神札という形ではありますが、2人が出会えたことにロマンを感じます。

11:00 下山開始です。下山は同じルートを下ります。先ほどもお伝えしたように、富士宮ルートは登山道と下山道が同じになっているので、登ってくる人に配慮しながら下りるようにしましょう。

今回気付いたことですが、この時間は気温が高くなってくるので、結構しんどいかもしれません。登ってくる人たちを見ると、たくさん汗をかいていたので、結構キツそうでした。

僕はさまざまな理由から「日帰り派」なのですが、早朝は気温が低いので快適に登ることができます。午後に比べると天気も安定しています。もちろん日頃の運動や登山経験、装備を含め、準備不足の状態での日帰り登山には反対の立場です。しかし、きちんと準備をしていれば、時間に余裕を持った下山は可能かと思います。富士山はちゃんと準備をした人は登らせてくれる山だと思います。

12:48 下山完了。シャトルバスは一時間に一本の間隔で出ています。

13:30 水ヶ塚駐車場まで戻ってきました。

今回拾った山ゴミ。ほとんどゴミは落ちていませんでしたが、目についたゴミはすべて拾うように心掛けています。いつまでも綺麗な山であってほしいことや、神聖な山に「登らせていただいている身」として、どの山でもゴミを拾うようにしています。自然に対する謙虚な気持ちが、高慢な気持ちを抑え、事故の予防にも繋がると考えています。

帰りの高速道路でも、バックミラー越しに富士山が綺麗に見えたのですが(曇って見えないことのほうが多い)、サクヤビメとオオヤマツミノカミが「また来てね!」と仰っているように感じました。良い事をしたお陰でしょうか。スピリチュアル的な話ではなく、そう感じたほうがロマンがある、という個人的な楽しみ方です。

富士山ラーメン

水ヶ塚駐車場にはお土産ショップがあります。レストランも併設されているので、お昼前後に下山すれば食事ができるのも嬉しいですね。

ということで、今年の富士登山も無事に終えることができました。富士宮ルートは、登山の経験がそこそこある方であれば、とても登りやすいルートだと思います。距離も短く、景色も良い、山小屋も充実しているので、初めて富士登山に挑戦する方にはオススメかな、と思います。(吉田ルートもおすすめですが、近年ルールが厳しくなっているので登りづらいルートとなってしまいました)

急かす訳ではありませんが、一部の心無い人やルールを守らない人、山を軽視している人によって年々規制やルールが厳しくなっていますので「いつか登りたい」と思っている方は、早めに登ることをオススメします。年齢的にも今日が一番若いわけですし(若ければ若いほどラク)、一年のうちで7 ~ 9月という短い期間しか登れない山ですからね。きちんと準備して「また登りたい!」と思える富士登山にしてくださいね。

さて、残すは『須走ルート』のみになりました。来年挑もうと思います。富士山のコースはそれぞれ特徴が異なるので、違う楽しみ方があって楽しいですね。この記事がどなたかの参考になりましたら幸いです。素敵な山ライフを!

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