とある「おじいちゃんドクター」に診てもらってから10年以上風邪を引いていない話。

もう10年以上前なのは確かです。僕が最後に風邪を引いたのは。

元々「超病院嫌い」ですし、待合室で待っていると余計に具合が悪くなるんじゃないかと思ってしまうほど捻くれた性格なので、よほどのことがない限り、お医者様に診ていただくことはないのです。

しかし、表参道で働いていた時のこと。少し熱っぽくなってしまい「早く治さないとやばいな」と思い、近所のクリニックに渋々足を運んだのです。

とりあえず薬だけもらおう、くらいの感覚で行きました。

診ていただいたのがおじいちゃん先生だったのですが、いきなりかなり年季の入ったノートを開いて「手洗いとうがいね。あとはシャワーも毎日しっかり浴びること。これだけはちゃんとやってね」くらいで説明が終わったんです。1分くらいだったんじゃないでしょうか。

しかも、処方箋を出されなかったのかな?薬をもらわなかったんですよ。なので、帰りに近所のドラッグストアでコルゲン(うがい薬)と新しいハンドソープだけ買って帰ったのです。

僕としてはもう少しちゃんと診てもらいたかったし、なんか、手洗いだのうがいだの、シャワーを浴びるだの「そんな当たり前のことやってるよ」くらいにしか思わなかったのです。せっかく渋々足を運んだ上に、苦手な待合室で待ったのに、それだけ?みたいな。ただ、あの年季の入ったノートはどうも頭から離れなくて。ペンでなぞり過ぎて、もはや文字が解読できないという。何千、いや何万人の患者さんに同じ説明をしてきたんでしょう。

ただですね、それから今日に至るまで、一度も風邪を引いてないんですよ。これ本当です。コロナはもちろん、インフルエンザにも一度も罹ったことがない。

もちろん、接客業という職業柄、絶対に体調を崩せないなので、それまでも体調管理には充分気をつけていました。手も洗うし、うがいもする、シャワーだってもちろん毎日浴びます。平均的な人たちよりも、衛生面には気を配っているほうです。ただ、やはり年に1 ~ 2回、季節の変わり目に扁桃腺が腫れたりはしていたのですね。

それが、今日に至るまでまったく無くなったわけです。そこで思ったんです。

「当たり前のことをどこまでも徹底すること」

今でも僕の人生哲学になっています。人ってつい目新しいものや斬新なものに手を出したくなるものです。こっちのほうが良いんじゃないか、あっちのほうが凄いんじゃないかと。ダイエットで言えば「これを食べれば痩せる」「こっちの運動のほうが痩せやすい」というように。

でも、僕は「当たり前のことをどこまでも徹底すること」が一番大切だと思っているのです。むしろ、当たり前のことを徹底していれば大きな問題はさほど起こらないと思うのです。

だからそれ以来、僕の中の「当たり前」をもう少し見直すことにしたのです。手を洗うだけではなく「爪や手首、指の股まで丁寧に洗うこと」、軽くうがいをするのではなく「うがい薬を使ってこまめにうがいをすること」など。何度も言うように、これらのことは以前からしてきたことですが、どこか甘かったんでしょう。洗ってはいるけど「洗った気になっただけ」だったり、うがいはしているけれど「うがいをした気になっただけ」だったり。

あのおじいちゃん先生、僕の中では「名医」です。人生における本当に大切なことっていつだってシンプルですよね。何かに行き詰まったり、答えが出なかったり、壁にぶち当たったり、誘惑に負けそうになったりした時は、常に初心に戻るようにしています。

「そんなの知ってるよ」と言われてしまうのを承知で、それでも当たり前のことの重要性を説くことのできる人って、本当に尊敬しますし、カッコいいなって思うんです。

大切なことなので、最後にもう一度繰り返します。

「当たり前のことをどこまでも徹底すること」

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