【伊勢神宮】東京から自転車でお伊勢参りしてきた話(前半)

「一生に一度はお伊勢参り」

そんな言葉を聞いて、居ても立っても居られない自分がいた。いつか機会があれば行ってみたいなと思っていたけれど、今がちょうどそのタイミングなのかなと。元々、日本の歴史や神社が好きで、特に江戸時代の暮らしには強い関心がありました。

健康に携わる身として最も尊敬しているのが「昔の人」なのです。今のように文明や科学、医療、情報技術の発達していなかった時代に、どんな気持ちでお伊勢参りをしていたのか。想像すれば想像するほど、調べれば調べるほどに興味が湧いてきました。

江戸から伊勢まで約500kmの道のりを約2週間かけて歩いていたそうです。帰り道を含めると約1000kmの旅になります。一日あたり約40kmほど歩いていたそうです。コンビニも自販機もシューズもレインウェアもない時代にどうやって。

昔は一生に一度行けるかどうかの時代を生きていたことを考えると、行こうと思えばいつでも行けてしまう自分は、本当に恵まれた時代に生まれたなとつくづく感じます。

そんな良い時代に敬意を払いつつ、少しでも過去に思いを馳せられるような旅をしたい。そこで、伊勢神宮まで自転車で行くことに決めました。日程は3泊4日。途中フェリーを使い、帰りは新幹線で輪行で帰ってくるという、江戸の人から怒られそうなプランです。

それでも総距離約400km、個人的には最長記録の挑戦になるので、準備と計画を入念におこない、満を持して挑みました。記事が長くなる都合上、前半と後半に分けました。

一日目は静岡県の清水市を目指します。それではお伊勢参りの旅に出発。

多摩大橋

朝の4時半に自宅を出発。初日から大雨。4日も走ればどこかで雨に降られる可能性はあるだろうな、と考えていたので防水対策はしていましたが、初っ端から大雨です。

高尾山口駅

八王子の市街地を抜けて、高尾山口に到着。ここが最初のチェックポイント。伊勢までの道のりは長いので「次はここを目指すぞ」的な感じで、事前にある程度チェックポイントを決めています。目標を細分化し、一つ一つ着実にクリアしていくことでモチベーションを維持しやすくなるからです。

大垂水峠までの坂

幸いにも雨は止みました。次のチェックポイントは大垂水峠。東京と神奈川の県境にある有名な峠です。まだまだ序盤ですが、割とカロリー高めの坂道が続きます。ここで脚を使いすぎると後半痛い目に遭うので、ギアを軽めにしてハイケーデンスで体力を温存します。

大垂水峠

大垂水峠を越えるとしばらく下り基調の道が続きます。路面が濡れているので飛ばし過ぎは注意。雨上がりで寒いのでウインドブレーカーを着用。

中央自動車道を眺めながら「車だったら速いのになぁ」と心の中でブツブツ言いながら、次のチェックポイント「大月」まで向かいます。大月までの道のりが長い、狭い、そしてアップダウンが多い。車の場合、大月までは甲州街道ではなく中央自動車道(高速)で行くのが一般的なので、この道を走るのは初めて。みんな高速を使うから、きっと交通量は少ないないんだろうな、と思っていたのが大誤算。

近隣住民の生活道路になっているみたいで、しかも平日の通勤時間帯だったので、都心並みの交通量。道もあまり広くないので、完全にごめんなさい状態で走りました。

繰り返されるアップダウン、心無いクラクションに腹を立てながらも、なんとか大月に到着。疲れた。朝9時、ちょうどすき家が営業していたので朝ごはんをいただきました。こういうのが日本のチェーン店の素晴らしいところです。肉だと胃がもたれるので魚定食で。温かい味噌汁が五臓六腑に染み渡る。

まだ清水駅までの1/3を走り終えたところですが、ここまで来れば今日の山場は越えたようなもんだろう、と思っていたのが大誤算。まだまだ坂が続きます。

リニアモーターカー見学センター

次のチェックポイントは富士山駅です。富士山の麓にある駅です。大月からは139号線を使います。このあたりの道、高速道路だと割とフラットな感じなのですが、一般道はなぜか延々と上りが続く感じでした。冷静に考えれば、山の方角に向かうわけですから、上りになるのは当然だよなと思いました。

この道も地域住民の方の生活道路になっており、おまけに道幅も狭いのでごめんなさい状態。

自転車に乗っていて一番疲労を感じるのは、坂道ではなく、ドライバーさんへの申し訳なさです。都心だとお構いなしに抜いてくれますが(よく死にそうになります)、郊外だと自転車慣れしていないドライバーさんも多いので、道幅に余裕のある箇所でもなかなか追い越すのが難しいようで、一台の自転車のために申し訳なくなります。

金鳥居

11時に富士山駅に到着。外国からの観光客がたくさんいました。晴れていると金鳥居のある参道から富士山が綺麗に見えるようです。

次のチェックポイントは本栖湖です。富士急ハイランドを右手に139号線ルートを進みます。この道は「ふもとっぱらキャンプ場」に行く時とまったく同じルートなので、車で何度か走ったことがあります。標高が約900m前後あるので、車だと何も感じませんが、自転車だと若干の息苦しさは感じます。

青木ヶ原樹海を抜けていきます。このあたりまで来ると道幅が広くなるのでだいぶ走りやすい。ただ、木の枝が落ちていたり、道路が割れていたりすので注意が必要。グラベルロードバイクで良かったと思うシーンが多々ありました。

本栖湖に到着。ここでお昼休憩。名物の鹿カレーをいただきました。クセがなくて美味しかったです。

さて、一日目の前半戦は終了といったところです。清水駅まではまだ1/2ほどの距離ですが、ここからは下り基調の道が続くので、気持ち的にもラク。本栖湖から南下して興津駅を目指します。

本栖湖を出発。少しアップダウンを繰り返したのち、ここからは長い長い下り道になります。ふもとっぱらキャンプ場のある朝霧高原を抜けて、ひたすら南下していきます。天気が良ければ左手に富士山が大きく見えますが、この日はお預け。

富士山の代わりに牛と会話

途中で脇道に入り、身延線の芝川駅に向かいます。139号線を最後まで辿ってしまうと富士市のほうに向かってしまうので、東方向に巻き戻る形になってしまうからです。富士市から国道1号線で興津方面に向かう方法も検討しましたが、どうやら自転車で走れる道があまり整備されていない模様。

山越えという形にはなってしまいますが、笹川駅からは75号線と52号線を使って興津駅に向かいます。なかなかの勾配が続きますが、これまでの坂道を考えるともう慣れました。体力的な意味ではなく「精神的な意味で」です。「うわぁ、また坂だ」と考えるとツラくなるので「あ、そうですか」くらいの気持ちで考えるとなんとなくラクになります。

興津駅に到着。東海道五拾三次は、江戸日本橋から数えて17番目の宿があった街です。どこか懐かしい江戸の街並みを楽しみながら清水駅に向かいます。

17時、清水駅に到着。東京の自宅から約12時間で着きました。

ホテルでチェックインを済ませます。自転車は輪行袋に入れれば、基本的にはどこのホテルでも室内への持ち込みは許可していただけるはずです。断られたことは一度もありません。

予想よりも早く到着したのでまだ外は明るい。お腹も空いたし、早めの夕飯を食べに外に繰り出します。

清水港にある「河岸の市(かしのいち)」で海鮮丼をいただきました。この世にはこんなに美味しい食べ物があったのか!と思うくらい美味しかった。唐揚げとビールも追加しておきました。もう最高。

そして、清水といえば「ちびまる子ちゃん」の作者さくらももこさんの出身地。ちびまる子ちゃんの世界が楽しめる『ちびまる子ちゃんランド』が名所になっているそうなので寄ってきました。

ちびまる子ちゃん神社

そんな感じでは一日目が無事に終了。200kmという過去最長距離の挑戦なので不安でしたが、なんとかなるもんですね。しかも、ただでさえ重いグラベルロードバイクに、荷物を積んだ状態なので、ハードルはやや高め。歳の割にはまだまだ動けるな、というのが個人的な感想です。なんなら20代の頃より全然動ける。人の体には無限の可能性がある、と改めて感じた一日でした。

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