富士山最難関ルート「御殿場ルート」から足袋で日帰りしてきた話。

富士登山の中でも最難関と呼ばれる「御殿場ルート」で登頂しました。今回はその記録です。

深夜に自宅を出発、御殿場ルートの登山口に向かいます。僕の父親は「振り返らないほうがいいぞ。後部座席に誰か座ってるかもしれないから」みたいな冗談をいつも言ってきます。その時は、またバカみたいなこと言ってるなぁとしか思わないんですが、実際にその場所まで行くとなかなかのスリル。

3時45分、御殿場口の駐車場に到着。富士山のほうを見上げると、ご来光目的で列を成す人の明かりが見えます。これがとても幻想的。満点の星空も楽しめます。

4:30 空が明るくなってきたので登山開始です。富士山は入山料はかかりませんが、保全協力金(任意)として1,000円払いました(木札バッジを貰えます)。日本を代表する山としていつまでも綺麗な山であってほしいですね。ご厚意で撮っていただいた写真が見事にブレブレでこれがなかなか味があります。

10分ほど上ると大石茶屋に着きます。御殿場ルートの特徴の一つとして、人気の吉田ルートと比べて山小屋が少ないこと。この先、3 ~ 4時間ほど山小屋はありませんので、水分や食料をしっかり用意したほうがいいでしょう。

登ること数十分、後ろを振り返るとご来光。御殿場ルートは雲海を眺めながら登ることができるのがいいですね。

今回は、とある実験をするためにパルスオキシメーターを持ってきました。コロナ禍で話題になった「酸素飽和度」を計測する機械です。簡単に言うと、体の中の酸素の割合です。富士山のような酸素の薄い山に登ると、体内でどのような変化が起こるのかを実験してみたかったのです。夏休みの自由研究みたいな感覚です。

すっかり空が明るくなりました。良くも悪くも富士山は視界を遮るものがないので日差しが強い。気温は低いけれど、太陽との距離が近いので日焼け対策は万全に。

ちなみに今回は「足袋」で登りました。ドラマ「陸王」のモデルとなった、きねや足袋株式会社のランニング用足袋「無敵(MUTEKI)」です。ワラーチで走り慣れている僕にとってはとても走りやすい一足です。自分の足の感覚で地面を捉えることができるので「力の加減」が掴めるので、無駄なパワーを使わずに登ることができます。

ワラーチで登りたかったのですが、辞めた理由はこれ。標高3000m付近までずっと「砂の上」を歩くからです。ワラーチだと、小石が足に挟まって痛いだろうと思ったからです。登りは我慢できても、下りの大砂走りは走るどころではないでしょう。かと言ってシューズで走るのは逆に足が疲れるので(僕の場合は)、足袋で挑戦することにしたのです。結果的に、問題なく登ることができ、むしろ快適でした。

7:15 ようやく新六号目の小屋に着きました。登り始めて約3時間、ここまでの距離が長すぎますね。

今回の行動食MVPはこちら。エネルギーも塩分も同時に補給でき、しかも美味しいので超優秀。今後もお世話になりそうです。昔はちゃんとスポーツ羊羹や大福、どら焼きなど「THE 行動食」みたいのを食べていたんですが、やはり飽きてくるので、スーパーやドンキで色んな食材を物色するのが楽しかったりします。行動食は「ハイカロリーで、疲れていても食べたいと思えるもの」を基準に選んでいます。

標高3,000mを超えました。酸素飽和度をチェックするとビックリ。74まで下がっていました。「少し苦しいな」と感じた時には、このくらいまで下がっているということがわかりました(あくまで僕の場合です)

昔、教わったことですが、酸素飽和度を下げないことも大切ですが、①下がったことに気づくこと、②リカバリー(回復)する方法を知っておくこと、の2つが大切になります。 酸素飽和度が下がったまま登り続けてしまうと高山病になるリスクがあるので、まずは下がったことにいち早く気付くことが大切です。

そして、ペースを落としたり、立ち止まって深呼吸をしたり、酸素飽和度をリカバリーする方法を身につけておくことが大切になります。高山病に「なる or ならない」というより、そうなるリスクを少しでも下げるように工夫しながら登ろう、と考えています。

7合目を過ぎると砂道は終わり、登りやすい地形になります。小屋の前には休憩するベンチがありますので、焦らずにゆっくり登っていきます。

8合目を過ぎると、つづら折りのような坂が現れます。「まだこんなに登るんかい!」と思いますね。上のほうにいる人が豆粒のように見えますから。

途中で4人家族のファミリーと会話するシーンがありました。

子「まだ着かないの?もう疲れた!」と泣きそうになっていました(いやほんとに)

僕「すごいですね、小学生ですか?」と聞くと

父「小学5年と2年ですね」

僕「!!!」

ビックリです。小学校低学年で御殿場ルートを登るんですから(しかも日帰り)

お父さんスパルタすぎでしょ(笑) 僕が同じくらいの年齢の時は、学校の遠足で高尾山に登ってたくらいですから。キツいですよね。ただ、夏休みの思い出だけでなく、人生の思い出としても素敵な1ページになることでしょう。

山頂直下が一番キツい。鳥居が見えればゴールはすぐそこ。

10:46 御殿場口の頂上に到着しました。

日本最高地点、剣ヶ峰を目指します。

11:08 日本最高地点に到着。今回で4度目となる登頂ですがいつ登っても最高です。

お楽しみの大砂走り。フッカフカの砂の上を猛ダッシュで下山。山頂から1時間半ほどで登山口に着きました。来年もまた登ると思いますが、毎回違うスタイルで登るので、どう登ろうか今から楽しみです。

【おまけ動画】山頂の小屋で酸素飽和度を計測してみました。なにも意識せずに呼吸していると71まで下がっていることがわかります。ここから深呼吸をすると、すぐに90以上まで回復していることがわかりますね。

なので、苦しくなったらペースを落としたり足を止めて深呼吸をすることで高山病のリスクを下げることができます。できれば歩行速度も深呼吸に合わせるくらいのゆっくりとしたスピードで登るといいでしょう。僕も頭ではわかっていましたが、いざこうやって数字で見ると面白い発見がありますね。

なぜ山に登るのか。「高いところに登らないと見えない景色があるから」

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