奈良の神社と古代史を巡る|大和神社・石上神宮・春日大社から平城宮跡へ

奈良の神社と古代史を巡る|大和神社・石上神宮・春日大社から平城宮跡へ

今回の伊勢・奈良の旅も、いよいよ最終日。

伊勢から始まり、元伊勢、飛鳥、纒向、三輪と、『古事記』や古代日本にゆかりのある場所を巡ってきました。

前回は、『古事記』を今に残した二人、稗田阿礼(ひえだのあれ)と太安万侶(おおのやすまろ)にゆかりのある賣太神社と多神社へ。

最終日は、奈良北部から天理周辺へ。

まだ訪れておきたかった神社や史跡を、まとめて巡っていきます。

向かったのは、大和神社、石上神宮、春日大社、率川神社、垂仁天皇陵、そして平城宮跡の第一次大極殿。

長かった伊勢・奈良の旅も、これで最後です。

目次

大和神社|戦艦大和にも祀られた古社

まず向かったのは、奈良県天理市にある大和神社(おおやまとじんじゃ)。

「やまとじんじゃ」ではなく、おおやまとじんじゃと読みます。

大和神社は、戦艦大和とも深いゆかりがあります。

戦艦大和には、大和神社の御祭神の分霊が守護神として祀られていました。

境内には、戦艦「大和」ゆかりの品々や、精巧な大和の模型が展示されている「戦艦大和展示室」もあります。

ただ、今回私がここを訪れたかった理由は、それだけではありません。

ここでも登場するのが、今回の旅で何度も名前が出てきた第10代・崇神天皇です。

大和神社で祀られている日本大国魂大神(やまとおおくにたまのおおかみ)は、かつて天照大御神とともに宮中で祀られていたと『日本書紀』に記されています。

しかし崇神天皇の時代、二柱の神様を宮中の外で祀ることになりました。

天照大御神を託されたのが、豊鍬入姫命(とよすきいりひめのみこと)。

そして日本大国魂大神は、のちに市磯長尾市(いちしのながおち)が祭主となって祀ったとされています。

同じころ、三輪山の大物主神には大田田根子(おおたたねこ)が祭主として選ばれました。

大物主大神、天照大御神、そして日本大国魂大神。

今回の旅で、それぞれに関わる場所を実際に巡ったことで、崇神天皇の時代が少しずつ立体的に見えてきました。

石上神宮|古代の武器庫と三つの神宝

大和神社からそのまま北上し、次に向かったのが石上神宮(いそのかみじんぐう)。

日本最古級の神社のひとつとされ、古代には朝廷の武器や宝物を納める場所でもありました。

石上神宮で特に面白かったのが、御祭神です。

中心となるのは、

布都御魂大神(ふつのみたまのおおかみ)
布留御魂大神(ふるのみたまのおおかみ)
布都斯魂大神(ふつしみたまのおおかみ)

の三柱。

名前だけ見ると少し難しいのですが、簡単にいえば、神話に登場する剣や神宝に宿る力を神様として祀っています。

ひとつは、神武東征で神武天皇を助けた剣。もとは武甕槌神(たけみかづちのかみ)が持っていたとされるものです。

もうひとつは、須佐之男命(すさのおのみこと)が八岐大蛇を倒したときに使った剣。

そしてもうひとつが、饒速日命(にぎはやひのみこと)が天降るときに授けられた十種神宝(とくさのかんだから)です。

饒速日命は、石上神宮と深く関わる物部氏の祖先とされています。

神武東征、須佐之男命、饒速日命、物部氏。

『古事記』や日本神話を読んでいると出てくる名前が、ここで一気に集まってきます。

春日大社|藤原氏の氏神と奈良の鹿

続いて向かったのは、奈良公園の東側にある春日大社(かすがたいしゃ)。

奈良時代の768年、現在につながる形が整えられたとされる神社です。

主に祀られているのは、

武甕槌命(たけみかづちのみこと)
経津主命(ふつぬしのみこと)
天児屋根命(あめのこやねのみこと)
比売神(ひめがみ)

の四柱。

春日大社は、当時大きな力を持っていた藤原氏の氏神として発展しました。

天児屋根命は、『古事記』にも登場する神様。

天照大御神が天岩戸に隠れたとき、岩戸の前で祝詞を奏上した神とされています。

そして、春日大社といえば鹿です。

武甕槌命(たけみかづちのみこと)は、もともと茨城県の鹿島神宮に祀られている神様です。

鹿島から奈良へ迎えられる際、白い鹿に乗ってやって来たという伝承があり、そのため奈良の鹿は古くから「神様の使い」として大切にされてきました。

現在、奈良公園で暮らす鹿たちも、その白鹿の子孫とも伝えられています。

昨年、私はその鹿島神宮を訪れました。

鹿島で出会った武甕槌命を、今度は奈良の春日大社で再び知る。

こうして離れた土地同士がつながっていくのも、神社巡りの面白いところですね。

また、境内には、約3,000基もの灯籠があります。

長い年月、多くの人から信仰されてきたことが伝わってくる景色でした。

率川神社|神武天皇の皇后と三枝祭

続いて訪れたのが、奈良市街にある率川神社(いさがわじんじゃ)。

大神神社の摂社で、中心に祀られているのは、初代・神武天皇の皇后となった媛蹈韛五十鈴姫命(ひめたたらいすずひめのみこと)です。

率川神社で有名なのが、毎年6月に行われる三枝祭(さいくさのまつり)。

この三枝祭は、古代の律令国家が定めた国家祭祀のひとつにも数えられています。

別名「ゆりまつり」とも呼ばれ、祭りでは三輪山に咲く笹百合(ささゆり)を酒樽のまわりに飾り、神前にお供えします。

御祭神の媛蹈韛五十鈴姫命(ひめたたらいすずひめのみこと)は、かつて笹百合が咲く三輪山の麓、狭井川のほとりに住んでいたと伝えられています。

『古事記』では、神武天皇が皇后を探していた際、大久米命(おおくめのみこと)が五十鈴姫命を見つけ、神武天皇にその存在を伝えたと記されています。

そして神武天皇と出会い、のちに初代天皇の皇后となられました。

三枝祭については、神社検定の勉強でも触れていたところ。実際にその舞台となる神社を訪れると、勉強していた内容がより身近に感じられました。

垂仁天皇陵|一番好きな天皇のもとへ

そのまま向かったのが、第11代・垂仁天皇(すいにんてんのう)の御陵です。

今回の旅では、崇神天皇陵と景行天皇陵にも足を運びました。

この二つは山の辺の道周辺にあり、纒向を巡った日に訪れることができました。

ただ、垂仁天皇陵だけは少し離れた場所にあります。

そのため、訪れるのは最終日になりました。

私は『古事記』に登場する天皇の中で、垂仁天皇が一番好きです。

今回の旅で何度も登場した倭姫命(やまとひめのみこと)の父。

そして、言葉を話すことができなかった皇子、本牟智和気王(ほむちわけのみこ)の父でもあります。

伊勢神宮へと続く倭姫命の物語。

本牟智和気王が出雲へ向かう物語。

垂仁天皇の時代には、私が好きな話がいくつもあります。

御陵の周りは、とても静かでした。

今回の旅でずっと訪れたかった場所のひとつ。

最後の日に、ようやくここまで来ることができました。

第一次大極殿|元明天皇と『古事記』の時代へ

今回の旅で最後に向かったのが、平城宮跡。

広い平城宮跡を進んでいくと、遠くからでも大きな屋根が目に入ります。

訪れたのは、復原された第一次大極殿(だいいちじだいごくでん)です。

ここは奈良時代、天皇が国の重要な儀式を行った、平城宮の中心となる建物でした。

第一次大極殿が使われたのは、元明天皇、元正天皇、聖武天皇の時代です。

なかでも今回の旅と深く関わるのが、710年に平城京へ都を移した元明天皇。

その元明天皇の時代、712年に完成したのが『古事記』でした。

『古事記』の編纂は天武天皇の命によって始まり、その後、元明天皇の命を受けた稗田阿礼と太安万侶が内容をまとめて献上しました。

今回の旅では、飛鳥で天武天皇の時代を訪ね、賣太神社で稗田阿礼、多神社で太安万侶をたどりました。

そして最後に立ったのが、元明天皇が都を置いた平城京。

ここまで来て、今回の旅が一本につながりました。

古事記に始まり、古事記に終わる旅

伊勢から始まり、元伊勢、飛鳥、纒向、三輪、そして奈良へ。

本や資料で読んでいた場所も、実際に自分の足で巡ってみると、距離や地形、その土地の空気まで含めて、少しずつ立体的に見えてきます。

雨の日も多く、大変なこともありました。

それでも、奈良で出会った人たちの温かさに触れ、自分の目で見て、自分の足で歩き、多くのことを学ぶことができました。

そして旅の最後。

雨続きだった数日間が嘘のように、平城宮跡にはきれいな夕焼けが広がっていました。

『古事記』を読んだことから始まった、今回の伊勢・奈良の旅。

最後に訪れたのは、『古事記』が完成した元明天皇の時代、その都が置かれていた平城京でした。

古事記に始まり、古事記に終わる旅。

今回学んだことを持ち帰り、これからの勉強にも生かしていきたいと思います。

学びは終わりません。

また、奈良へ戻ってきます。

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