自転車でお伊勢参り|東京から伊勢神宮まで約400km、3泊4日の旅【後半】

自転車で東京を出発し、伊勢神宮を目指す旅。

前半では、東京から静岡県の清水まで約200kmを走りました。

後半は清水駅を出発し、浜松、伊良湖岬、鳥羽を経由して、いよいよ伊勢神宮へ。

約400kmの道のりを自転車で走り、最後は伊勢神宮の外宮・内宮を参拝します。

今回は、その旅の後半です。

目次

清水から浜松へ|三保の松原と東海道の旅

2日目の目的地は浜松駅。

清水駅から浜松までは約100kmです。

前日の約200kmに比べれば距離は半分ですが、途中には宇津ノ谷峠や金谷峠があります。

朝10時、清水駅を出発。

まずは「宇津ノ谷峠」を目指します。

清水駅から国道1号線を使うルートが最短ですが、せっかくここまで来たので、世界文化遺産の「三保の松原」に寄り道することにしました。

道中、大きく富士山が見えました。

頭の部分のみではありますが、それでも都内から見る富士山とはまるでスケールが違う。

まさに「聳え立つ」という表現が合います。

三保の松原

30分ほどで三保の松原に到着。

まずは御穂神社にお参りします。

御祭神は大己貴命(大国主命)と三穂津彦命です。

参拝を終え、海岸まで続く「神の道」と呼ばれる参道を歩きます。

三保の松原と羽衣伝説

三保の松原は、「羽衣伝説」の舞台としても有名です。

ある日、漁師が松にかけられた美しい羽衣を見つけ、それを持ち帰ってしまう。

そこへ天女が舞い降りてきて、羽衣を返してほしいとお願いします。

羽衣を返す条件として舞を踊り、返してもらった羽衣とともに天へ帰っていった、というお話です。

残念ながら、この日は海岸から富士山を拝むことはできませんでした。

暖かい季節は雲が出やすいので、富士山を見るなら秋や冬のほうがいいのかもしれませんね。

名物の安倍川餅をいただきました。

お餅とは思えないほど柔らかくて美味しかった。

(「名物」という言葉に弱い)

そして、忘れていましたが、静岡といえばお茶の名産地。

お茶が大好きな祖母にお土産を買って帰りました。

とても喜んでくれたので、こちらも嬉しくなります。

久能山は徳川家康が最初に祀られた場所

三保の松原を後にし、海沿いの国道150号線を走ります。

天気が良くて気持ちがいい。

道も広く、信号も少ないので走りやすい。

久能山は徳川家康が最初に祀られた地

右には久能山、左には駿河湾が広がります。

久能山は、徳川家康が最初に祀られた場所としても知られています。

今回は時間の都合で立ち寄りませんでしたが、またゆっくり訪れてみたい場所です。

宇津ノ谷峠を越えて、東海道五十三次へ

静岡県は横に長い県なので、土地勘がないと「今どのあたりを走っているのか」がいまいち分かりません。

そこで、この日の目安にしたのが川でした。

この日は大きな川を3つ渡ります。

「安倍川」「大井川」「天竜川」です。

この3つの川を目印にして、行動計画を立てました。

まずは安倍川を渡りました。

お腹も空いたし、この先は峠越え。

しっかり腹ごしらえをしておきます。

最初の難所、「宇津ノ谷峠」が近づいてきました。

よし、登るぞ!

と意気込んだところで、道の駅を発見。

そう、道の駅にはだいたいその土地の名物が売られている。

お手洗いと水分補給のためだけに寄ったはずが、予想通り「峠のとろろ定食」なるものを発見。

さっき大きなおにぎりを2つ食べたばかりなのに。

しっかり定食(笑)

お蕎麦だけにしようと思いましたが、やはりここは名物の定食をいただきました。

人生初の自然薯(じねんじょ)はとても美味しかったです。

お醤油を垂らして、白米と一緒にいただく。

そして漬物とお味噌汁。

日本に生まれて本当に良かったと思う瞬間です。

気を取り直して、峠に向けて出発。

こんなお腹いっぱいの状態じゃ坂道を登れないぞ、と思っていました。

ところが、ここで世紀の大発見。

自分でも不思議なくらいに脚が動く。

気分が悪くなるどころか、むしろ調子がいい。

体が軽い。

経験的に、炭水化物、特に米をしっかり摂れば体が動くことは分かっていました。

でも、こんなにお腹いっぱいの状態でも、気分が悪くなることなくしっかり体が動くとは思いませんでした。

これも先人の知恵というやつですね。

岡部宿と柏屋|江戸時代のお伊勢参りを知る

宇津ノ谷峠を越えて、岡部宿に出ました。

岡部宿は、東海道五十三次の21番目の宿場です。

古風な街並みを楽しんでいると、「柏屋(かしばや)」という資料館を発見。

江戸時代に旅籠として利用されていた建物が残されています。

時間がないので、そのまま通り過ぎようかと思ったけれど、少し気になる。

5分くらいで出てこようと思いました。

ところが……

「本日はお越しいただきありがとうございます。館内の案内を担当させていただきます……」

なんと、ガイドさんがついてくださいました(笑)

来館者一人ひとりについてくださるみたいです。

レーパンですけど大丈夫ですか(汗)という感じでした。

江戸時代の当時の様子から、旅籠の仕組み、食事、武士の階級による部屋割りなど、とても丁寧に説明してくださいました。

こういった資料館は、ツアーや修学旅行でもない限り、なかなかガイドさんに説明してもらう機会はありません。

本当に楽しかった。

この旅に出る前に、十返舎一九の『東海道中膝栗毛』で予習してきてよかった。

5分で出てこようと思っていたのに、どんどん楽しくなってきて、最後はこちらが質問責めをする形になってしまいました。

弥次さん喜多さん

江戸時代のお伊勢参りは、どんな旅だったのか

一番興味深かったのが、当時の食事です。

一汁三菜が基本で、宿によって内容が異なります。

まだ肉を食べる習慣はなく、幕府による質素倹約の政策もあったため、とても贅沢な食事とはいえません。

しかし、日本橋から伊勢神宮までの道のりは、陸路で約500km。

それを約2週間かけて歩くわけですから、1日約40km。

毎日フルマラソンに近い距離を歩くことになります。

それを当時の人々が普通にやっていたことに、まず驚きます。

自動販売機もコンビニもない。

高機能なレインウェアも、ウォーキングシューズもない。

スマホもなければ、Googleマップもない。

疲れたからやっぱり電車で行こう、ということもできません。

怪我なんかしたらどうするんだろう。

そう考えると、昔の人は本当に超人だったんだなと思わざるを得ません。

ちなみに500kmというのは片道なので、往復なら約1000km。

「自転車でお伊勢参りするんだ!(片道)」なんて、少し誇らしげに思っていた自分が、なんだか恥ずかしくなってしまいます。

そう考えると、「一生に一度はお伊勢参り」という言葉の重みも少し分かる気がします。

現代では「一生に一度は行っておいたほうがいい」というニュアンスで使われることが多いと思います。

でも当時は、本当に「一生に一度、行けるかどうか分からない」という旅だったのでしょう。

過去とのつながりを知れば知るほど、こうして快適に旅ができる時代に感謝の気持ちが湧いてきます。

5分の予定が、結局1時間近く滞在していました。

もっと見たかった。

金谷峠を越えて浜松へ

急ぎ足で藤枝市、島田市を越え、大井川に到着。

この旅最大の難所・金谷峠

大井川を越えると、すぐに「金谷峠」に差し掛かります。

この旅、最大の難所です。

噂に違わぬ急勾配が続きます……。

が、これまでもいくつも山を越えてきたので、さほどキツくなかった、というのが正直な感想です。

少し臆病でいるくらいが、ちょうどいいですね。

大井川を越えるとすぐに『金谷峠』に差し掛かります。この旅、最大の難所です。噂に違わぬ急勾配が続きます、、、が、これまでもいくつも山は越えてきたので、さほどキツくなかった、というのが正直な感想です。少し臆病でいるくらいがちょうどいいですね。

日坂宿と夜泣き石の伝説

東海道五十三次の「日坂宿」に到着。

ここで有名なのが「夜泣き石の伝説」です。

昔、山賊に襲われた妊婦が赤子を産み落とし、その妊婦の魂が乗り移った石が夜な夜な泣き、それに気付いたお坊さんが赤ん坊を助けた、という伝説です。

天竜川を渡れば浜松

なんとか陽が沈む前に天竜川に到達。

この橋を渡れば浜松市です。

浜松名物「さわやか」のハンバーグ

浜松市に到着。

時刻は18時30分。

完璧なタイミングです。

そう、人生初の静岡名物「さわやか」のハンバーグを食べに来たのです。

もう、このために東京から自転車で走ってきたと言っても過言ではない。

ちょうど良い時間に到着したこともあり、店内はまだガラガラ。

そして数分後には満席。

本当に美味しかった。

今こうして記事を書いている時も、もう食べたくて仕方ありません。

「一生に一度はさわやか」ですね。

浜松駅に到着。

今日も長い一日でした。

自転車だと小回りが効くので、いろいろな場所に気楽に立ち寄れるのがいいですね。

新しい発見が尽きません。

旅を120%満喫しています。

浜松から伊勢へ|伊良湖岬からフェリーで鳥羽へ

3日目。

いよいよ三重県上陸作戦を決行する日です。

予定としては、まず浜名湖を越えて、渥美半島の先端にある伊良湖岬まで走ります。

そこからフェリーで三重県の鳥羽市へ渡り、伊勢神宮まで走るという計画です。

鳥羽から伊勢神宮までは約1時間。

フェリーに乗れば、旅もいよいよ終盤です。

8時に浜松駅を出発。

浜松城を少し見学してから、浜名湖へ向かいます。

知人に教えてもらい、浜名湖の弁天島にも寄りました。

『ゆるキャン△』の聖地の一つになっているのを忘れていたので、また見返そうと思います。

渥美半島を走って伊良湖岬へ

走ること1時間半、渥美半島に入りました。

ここからが長い。

伊良湖岬までは約50〜60kmです。

キャベツ畑を延々と走ります。

一本道ではあるけれど、アップダウンが多め。

ただ、途中にコンビニはいくつかあるので、水分補給は安心です。

浜松駅から走ること3時間半。

伊良湖岬に到着しました。

ターミナルで手続きを終えて、出航時間まで待機します。

伊良湖岬からフェリーで鳥羽へ

乗船料は1,800円。

自転車は輪行袋に入れて船内に手荷物として持ち込めば無料になります。

そのまま持ち込む場合は別途料金が発生します。

広々とした船内
太平洋側の脚(左)のほうが日焼けしてる
1時間の船旅(できれば3時間くらい休みたい)

三重県の鳥羽市に上陸しました。

鳥羽で伊勢海老を食べる

そういえば、まだお昼ごはんを食べていなかったことに気付く。

せっかく三重まで来た、ということで奮発して伊勢海老をいただきました

プリプリで美味しい。

ホタテのバター焼きも追加で。

まだ旅は終わっていないのに、完全にバカンス気分です。

ついに伊勢市に入りました。

早速、伊勢神宮に向かいたいところですが、その前に寄らなければならない場所があります。

伊勢神宮へ|まずは二見浦で身を清める

伊勢神宮を参拝する前に、二見浦で身を清めてから神宮へ向かう「浜参宮」という習わしがあります。

今回の旅では、

二見浦(二見興玉神社) → 伊勢神宮 外宮 → 伊勢神宮 内宮

という順番で参拝することにしました。

伊勢神宮への参拝前に、まず二見浦で禊をして心身を清める。

昔から続く、この「お伊勢参り」の流れを実際に辿ってみたかったのです。

今回は時間の都合で朝熊山には上がりませんでした。

伊勢神宮 外宮へ|豊受大御神を参拝

伊勢市駅まで来ました。

外宮は伊勢市駅のすぐそばにあります。

参拝コーデ

伊勢神宮参拝のために着替えます。

さすがにレーパンで参拝するのはアウト。

神様に失礼なので、参拝用にパンツを用意してきました。

外宮に祀られている豊受大御神

伊勢神宮の外宮に到着しました。

手水で身を清め、気を引き締めてお詣りします。

外宮に祀られているのは豊受大御神(とようけのおおみかみ)

衣食住をはじめ、食物や産業を司る神様で、内宮に祀られている天照大御神のお食事も司っています。

御正殿で日頃の感謝を伝える

御正殿では個人的なお願いをするのは避け、日頃の感謝をお伝えしました。

これは決まりというわけではありませんが、今回の旅ではそうしたかった。

なお、御正殿は聖域のため、鳥居より先は撮影できません。

多賀宮で荒御魂をお参りする

別宮の多賀宮には荒御魂が祀られています。

一柱の神様にも「和魂(穏やかな側面)」と「荒魂(活動的な側面)」があるとされ、個人的なお願いをするならこちらの荒御魂のほうが良い、ともいわれています。

外宮での参拝を終え、この日は終了。

外宮での参拝を終え、この日は終了。

いよいよ翌日は、伊勢神宮の内宮へ向かいます。

伊勢神宮 内宮へ|約400kmの自転車旅、最後の参拝

4日目。

長かった旅も、いよいよ最終日です。

日本の最高神とされる天照大御神が祀られている、伊勢神宮の内宮へ向かいます。

外宮から内宮までは約6kmほど。

ここまで約400kmを自転車で走ってきたと思うと、わずか6kmの道のりも感慨深く感じます。

内宮へ向かう朝

五十鈴川

天気は晴れ。

初日こそ雨に降られましたが、最終日は暖かく、とてもいい天気に恵まれました。

これも太陽神である天照大御神のお力でしょうか。

ありがたいサイクルラック

宇治橋を渡って伊勢神宮の内宮へ

入口にある神明鳥居(伊勢鳥居)の両側の柱は、前回の式年遷宮までは御正殿の棟持柱として使われていたものです。

そして次回の式年遷宮を迎えても、その役目は終わりではなく、また他の神社の一部として使われるそうです。

これぞ本当のSDGs。

すべてのものに神様が宿る「八百万の神」という考え方。

物を最後まで大切に扱うという日本の精神を、こうしたところにも感じます。

宇治橋

20年に一度の式年遷宮の際には、こちらの宇治橋も架け替えるそうです。

年間数百万人が参拝し、しかも往復で利用するため、20年も経つと橋もかなりすり減るのだとか。

最も深いところでは10cmほどすり減っているそうです。

五十鈴川

五十鈴川で身を清めます。

とても澄んでいて綺麗な川です。

一応、手水舎もありますが、手水舎というのはもともと禊の簡易版。

川や海、湖で身を清めるのは大変なので、後々になって考えられたものです。

川で身を清めてから参拝するのは初めてだったので、これも伊勢神宮の魅力の一つだと感じました。

ちなみに、五十鈴川にお賽銭を入れるのはやめましょう。

ここはお賽銭を入れる場所ではなく、あくまで身を清めるための場所。

慎ましく参拝するのが一番です。

伊勢神宮の御正殿で感じたこと

階段を上がると拝殿、そして御正殿があります。

聖域中の聖域です。

気を引き締めて、神様に日頃の感謝をお伝えしてきました。

これまでいろいろな神社を訪れてきましたが、涙が出たのはこの日が初めてです。

この国に生まれてきて本当に良かった。

そう強く実感しました。

荒御魂を祀る別宮へ

外宮と同様に、荒御魂が祀られている別宮もあります。

個人的なお願いをする場合はこちらでするようにします。

おかげ横丁で伊勢の名物を楽しむ

無事に参拝を終え、おかげ横丁へ。

江戸の街並みを再現したような町並みで、伊勢の名物を楽しむことができます。

伊勢うどん
手こね寿司
伊勢といえば赤福

最後の最後まで、お伊勢参りを楽しむことができました。

江戸時代、お伊勢参りの醍醐味は参拝だけではなく、こうした道中の食べ歩きにもあったそうです。

お伊勢参りブームの火付け役となった十返舎一九の『東海道中膝栗毛』にも、主人公の弥次さん・喜多さんが、道中さまざまな食を楽しみながら伊勢を目指す様子が描かれています。

自転車でお伊勢参りをして感じたこと

車や電車を使えば、東京から伊勢まではもっと簡単に来ることができます。

そこをあえて、自分の足で辿り着く。

そこに今回の旅の面白さがありました。

先日読んだ本に、こんなことが書かれていました。

「神社に参拝する時、家から一歩出たらそこは参道です」

本当にそうだなと思います。

自分の力だけで伊勢神宮まで辿り着いたように感じてしまいますが、決してそうではありません。

コンビニやレストランで働いてくれる人がいる。
道路を整備してくださった方がいる。
旅の途中で声をかけてくださった方がいる。
そして、今日まで神社を守ってくださった方々がいる。

いろいろな人の力があって、こうして無事に伊勢神宮へ参拝することができました。

約400kmの道のりを自転車で走ってみて、目的地に着くことだけが「旅」ではないのだと改めて感じました。

走っている途中に見た景色。

偶然立ち寄った場所。

出会った人。

その土地で食べたもの。

そして、昔の人々が歩いた道。

その一つひとつが、伊勢神宮へ向かう「参道」だったのかもしれません。

今回のお伊勢参りで一番強く感じたのは、達成感よりも感謝でした。

無事に旅を終えられたこと。
伊勢神宮に参拝できたこと。
そして、この旅の途中で出会ったすべての人や景色。

そのすべてに、心から感謝しています。

これからも日本人としての誇りを持ち、自分の身体でいろいろな場所を訪れながら、日本の歴史や文化に触れていきたいと思います。

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