いよいよ、今回の伊勢・奈良の旅のメインイベント。
この日は、奈良県桜井市にある大神神社(おおみわじんじゃ)へ。
参加したのは、神社検定を運営する公益財団法人 日本文化興隆財団(神社検定事務局)が主催する1日セミナーです。

大神神社の神職による講話をはじめ、正式参拝、そして境内を巡りながら大神神社や三輪山信仰について学ぶという内容。
今回の旅では、三輪山や大物主神、崇神天皇にまつわる場所をいくつも巡ってきました。
そしてついに、その中心ともいえる大神神社で一日を過ごします。
雨続きだった旅。そしてこの日も雨予報
今回の旅は、本当に雨に振り回されました。
ほぼ毎日のように雨。
止んだと思ったら、また降る。
予定を変えたことも何度かあり、正直なところ、なかなかのストレスでした。
そして大神神社を訪れるこの日も、予報は一日雨。
さすがにこの日は諦めていました。
ところが。
当日、空を見上げるとご覧の通りの晴天。

ここ数日の雨が嘘だったかのような天気になりました。
神職の方も、
「皆さんの思いが届きましたね」
と話されていました。
この旅でずっと三輪山や大物主神の物語を追いかけてきただけに、三輪山の神様に迎えていただいたような気持ちになりました。
大神神社の神職による講話
まずは、大神神社の神職の方による講話から。
大神神社の歴史や三輪山信仰、祭祀について、直接お話を聞かせていただきました。


普段の参拝では、由緒書きを読んだり、帰ってから本で調べたりすることがほとんどです。
こうして実際に神社に奉職されている神職の方から、その場所でお話を聞けるというのは、とても貴重な機会。
本で読んできたことも、実際にその土地に立って聞くと、また違って感じられます。
講話を終えたあとは昼休憩。
そして午後、今回楽しみにしていた正式参拝へ向かいます。
初めての正式参拝
実は、私にとって今回が初めての正式参拝でした。
普段、私たちが神社を訪れたときは、拝殿の前からお参りすることがほとんどです(これを「略式参拝」といいます)。
今回は拝殿へ昇殿し、より神前に近い場所で参拝させていただきます。
正式参拝があるため、今回の旅にはスーツもしっかり持ってきました。

車中泊をしながら伊勢・奈良を巡る旅にスーツまで積んでくることになるとは思いませんでしたが、この日のためです。
そして何より、
初めての正式参拝が大神神社だったこと。
これは私にとって、とても大きなことでした。
『古事記』を読み始めてから、大物主神や崇神天皇、大直禰子の物語は特に印象に残っています。
その大神神社で初めて正式参拝をさせていただけたことは、本当にありがたい経験になりました。

大神神社には「本殿」がない
正式参拝を終えたあとは、神職の方に案内していただきながら境内を巡ります。
大神神社の大きな特徴のひとつが、
本殿がないこと。
大神神社では、御祭神の大物主神(おおものぬしのかみ)が背後にそびえる三輪山に鎮まるとされ、三輪山そのものを御神体として仰いできました。

拝殿の奥にある三ツ鳥居を通して、三輪山を拝します(三ツ鳥居を見ることはできません)。
神様を社殿の中にお祀りする以前の、古い神祭りの姿を今に伝えている神社です。
こうした神の鎮まる神聖な山を、神奈備(かんなび)と呼びます。
大きな社殿の中ではなく、山そのものを拝む。
実際に三輪山を目の前にすると、大神神社が他の神社とは少し違って感じられる理由がよく分かります。
大物主神の白蛇が棲む「巳の神杉」
境内には、とても大きな杉の木があります。

巳の神杉(みのかみすぎ)です。
大物主神の化身とされる白蛇が棲むと伝えられる御神木で、蛇の好物とされる卵がお供えされています。


大神神社と蛇。
この関係は、この日の最後にもう一度登場することになります。
このときの私は、もちろんそんなことは知りません。
宝物収蔵庫へ
宝物殿の前には、正月の「繞道祭(にょうどうさい)」で使われたと思われる大松明も置かれていました。
御神火を移し、三輪山麓の摂末社を巡るために使われるものです。

続いて向かったのが宝物収蔵庫。
写真を撮ることはできませんでしたが、大神神社に伝わるさまざまな宝物や、三輪山周辺の祭祀に関係する資料などが展示されていました。
神社を参拝するだけではなかなか見ることのできない、古代の三輪信仰の痕跡に触れられる場所です。
こうしたものを神職の方の説明を聞きながら見られるのも、今回のセミナーならではでした。
狭井神社|病気平癒と健康を願う神社
そこからさらに境内を進み、大神神社の摂社である
狭井神社(さいじんじゃ)へ。

狭井神社には、大物主神の荒魂(あらみたま)が祀られています。
古くから病気平癒や健康を願う人々の信仰を集めてきた神社です。
狭井神社へ向かう参道には、
「くすり道」
があります。

歩いていると、製薬会社の名前が刻まれた灯籠がずらりと並んでいます。
狭井神社が古くから健康や病気平癒の信仰を集めてきたことを知ると、この場所にある意味が分かってきます。
万病に効くと伝わる御神水
狭井神社の拝殿脇には、井戸があります。

この井戸は、「狭井神社」という名前の由来にもなっているとされています。
ここから湧き出る水は、古くから薬水(くすりみず)と呼ばれ、万病に効くと伝えられてきました。

現在も「御神水」として、この水を求めて多くの人が訪れています。
久延彦神社|『古事記』に登場する物知りの神様
さらに進んでいくと、
久延彦神社(くえひこじんじゃ)があります。

御祭神は久延毘古命(くえびこのみこと)。
この神様も『古事記』に登場し、田んぼに立つ案山子(かかし)の神様として知られています。
出雲の大国主神が国づくりをしていたとき、海の彼方から小さな神様がやってきます。
しかし、誰に尋ねてもその正体が分かりません。
そこで久延毘古に尋ねると、
「神産巣日神の御子、少名毘古那神である」
と、その正体を知っていました。
久延毘古は歩くことはできませんが、世の中のことを何でも知っている神様として『古事記』に描かれています。
そのため現在では、知恵や学問の神様として信仰されています。


『古事記』で読んでいた神様を、こうして実際に祀られている場所でお参りできる。
これも今回の旅の面白いところです。
大直禰子神社|ようやく大直禰子に会えた
そして、さらに進むと、
今回どうしても訪れたかった場所のひとつ、
大直禰子神社(おおたたねこじんじゃ)があります。


御祭神は、大物主神の子孫とされる大直禰子命(おおたたねこのみこと)。
これまでの記事でも何度か登場してきた人物です。
崇神天皇の時代、国内に疫病が広がったと伝えられています。
そこで大物主神の神意に従い、その子孫である大直禰子を探し出し、祭主として大物主神を祀らせると、疫病がおさまったとされています。
初めて『古事記』を読んだとき、
「おおたたねこ……ネコ?」
と、その名前のインパクトで妙に覚えてしまった人物。
もちろん動物の猫とはまったく関係ありません。
そこから『古事記』を何度も読み、今回の旅でも崇神天皇や三輪山の物語を追いかけてきました。
そしてようやく、
大直禰子ゆかりの神社まで来ることができました。
ちょっと感慨深いものがあります。
もう一度、拝殿へ
こうして、約6時間にわたるセミナーが終了。
神職の方の話を聞きながら境内を巡り、本で得た知識と実際の場所が少しずつ重なっていく、とても濃い一日になりました。
駐車場まで戻ったものの、なぜかそのまま帰る気になれませんでした。
雨予報だった一日が晴れ、初めての正式参拝もできたこともあり、
もう一度だけ感謝を伝えてから帰りたい。
そう思い、一人で再び拝殿へ。
「今日はありがとうございました」
と参拝を済ませ、駐車場へ戻ろうとした、そのときです。
参道に現れた蛇
前を歩いていた女性二人組から、
「そこに蛇がいますよ」
と声をかけられました。
見ると、本当に蛇がいました。

驚きました。
というのも、大神神社の境内には、大物主神の化身とされる白蛇が棲むと伝えられているからです。
偶然にしてはタイミングが良すぎる。
一日雨の予報だったのに晴れた。
晴れていなければ、もう一度拝殿へ戻ろうと思わなかったかもしれない。
あのタイミングで女性二人がいなければ、蛇にも気づかなかった。
そして、そこに蛇がいなければ何も起こりません。
いろいろなタイミングが、あまりにも重なりました。
何かご縁をいただいたのかな。
そんなふうに感じました。
大神神社のお札をいただく
その出来事もあり、帰る前にもう一度授与所へ。
これからも大神神社へ参拝させていただきたい。
そして、このご縁を大切にしたい。
そんな思いから、神棚にお祀りする大神神社のお神札をお受けしました。

これからもご縁をつないでいきたい神社になった一日でした。
神社検定のイベントは、検定を持っていなくても参加できる
今回のイベントを主催しているのは、公益財団法人 日本文化興隆財団(神社検定事務局)です。
神社検定では、神話・神社・祭祀・歴史などを体系的に学ぶことができます。
私自身も勉強することで、それまで何となく参拝していた神社を見る視点が少しずつ変わってきました。
今回のような現地セミナーには、検定を持っていなくても参加できるものがあります。
神社や『古事記』、日本文化が好きな方は、ウェブサイトを覗いてみると面白いと思います。
大神神社で過ごした一日を終えて
大神神社で神職の方から直接話を聞き、正式参拝をし、境内を巡る。
とても濃い一日になりました。
歴史や神話を少し知ってからその場所を歩くと、見えてくる景色が変わる。
今回の旅では、それを何度も感じました。

そして最後に出会った一匹の蛇。
偶然だったのかもしれません。
それでも、この日いただいたご縁を大切にしながら、
また三輪の地へ戻ってきたいと思います。

