伊勢・奈良の旅、2日目の後半。
瀧原宮から奈良の元伊勢を巡った後、丹生川上神社(にうかわかみじんじゃ)へ向かいました。
雨や水を司る神様をお祀りする、以前から訪れてみたかったお宮です。

ただ、丹生川上神社には中社・上社・下社の三社があります。
しかも、それぞれ離れた山あいにあり、この日は相変わらずの土砂降り。
それでも、せっかく奈良まで来たのだから、三社ともお参りしてみたい。
そんな気持ちで、山道を走りながら巡ってきました。
丹生川上神社とは|雨と水を司る、歴史の古い神社

朝廷も雨乞いと雨止めを祈ったお宮
丹生川上神社は、古くから雨や水にまつわる祈りが捧げられてきた神社です。
雨が降らないときには雨乞いを、降り続くときには雨止めを。人々の暮らしに欠かせない水について、朝廷からも祈願が行われてきました。
奈良時代から雨の祈りで重んじられ、平安時代には京都の貴船神社とともに、祈雨・止雨の重要なお宮とされました。
朝廷から特に大切にされてきた「二十二社」の一社でもあります。二十二社とは、国の重大事などに、朝廷から特別なお供えを受けた神社のことです。
連日の雨にすっかり困っていた私ですが、昔の人にとっても、雨は暮らしを左右する大きな心配事だったのでしょうね。
どうして中社・上社・下社の三社があるの?
三社ある理由を知ると、少し複雑な歴史が見えてきます。
中世の戦乱により、かつての丹生川上神社がどこにあったのか、わからなくなったとされています。
その後、明治から大正にかけての調査によって、現在の下社・上社・中社が順に位置づけられました。
かつては三社をあわせて一つの「官幣大社丹生川上神社」とされていましたが、戦後、それぞれ独立した神社になったそうです。
同じ名前でも、それぞれのお宮に歴史があり、雰囲気も違います。
今回は、中社 → 上社 → 下社の順に参拝しました。
丹生川上神社 中社|御神水と、神武天皇の伝承が残る夢淵
正式な名前は「丹生川上神社」
最初に訪れたのは、東吉野村にある中社です。
一般には「中社」と呼ばれていますが、正式な名前は「丹生川上神社」。
水を司る罔象女神(みづはのめのかみ)をお祀りしています。

山からの水が湧き出す「丹生の真名井」

境内には、御神水が湧く「丹生の真名井(にうのまない)」があります。
御本殿の裏手にある乎牟漏岳を源とする水が、地下を通り、この井戸に湧き出ていると案内されていました。
山から届く水が、神様の恵みとして大切にされているのです。
雨の中でのお参りでしたが、水の神様のお宮だと思うと、降り続く雨にも少し違った気持ちになります。
龍神が棲むと伝わる「東の瀧」

境内から10分ほど歩くと、東の瀧(ひんがしのたき)があります。
龍神が棲むと伝わる滝です。
お宮に参拝するだけでなく、こうした周りの自然にも神様のお話が残っているのが、丹生川上神社の魅力だと感じました。
夢淵と「鮎」の字にまつわるお話
東の瀧のそばには、夢淵(ゆめぶち)と呼ばれる場所もあります。
ここには、神武天皇が大和平定の際、酒を入れた器を沈め、魚の様子を見て勝利を占ったという伝承が残っています。

そのお話は、魚へんに「占」と書く「鮎」の字にも結びつけて語られています。
魚に、占うで、鮎。
この漢字を見るたびに、この場所を思い出しそうですね。
丹生川上神社 上社|雨に包まれた「天空の社」
龍神をお祀りする、高台のお宮へ
続いて、丹生川上神社 上社(かみしゃ)へ向かいます。
三社は近くにまとまっているわけではなく、それぞれ移動に1時間ほどかかりました。雨の山道なので、運転にも気を使います。

上社でお祀りされているのは、雨や水を司る龍神、高龗大神(たかおかみのおおかみ)です。
高台にあり、「天空の社」とも呼ばれています。
晴れていれば雄大な景色が見渡せるはずなのですが、この日はあいにくの大雨でした。
さすが、雨を司る神様。
今日は、雨を降らせるべき日だったのかもしれませんね。
大滝ダムの建設に伴い、現在の場所へ
上社はもともと別の場所にありましたが、大滝ダムの建設に伴って、1998年に現在の場所へ移りました。
場所が変わっても、こうしてお参りできるように受け継がれているのですね。
雨の中のお宮も印象的でしたが、次は晴れた日に、ここからの景色をゆっくり眺めてみたいです。
丹生川上神社 下社|75段の階段と、白馬・黒馬に会えるお宮
御本殿へと続く、長い屋根付き階段
最後に訪れたのは、丹生川上神社 下社(しもしゃ)です。
丹生川のそばにあるお宮で、境内に入ってすぐに目を引いたのが、御本殿へと続く75段の屋根付き階段でした。

木造の階段が、山の上へと長く続いています。
こうした造りのお宮は珍しく、思わず見上げてしまいました。
白と黒の神馬に会いました
境内には、白馬と黒馬の神馬(しんめ)もいました。
この日は雨だったので、小屋の中で過ごしていました。

白馬は「白ちゃん」、黒馬は「黒ちゃん」という愛称もあるそうです。
実は、この白馬と黒馬にも、雨にまつわる歴史があります。
雨乞いには黒馬、雨止めには白馬
かつて朝廷が祈願をするときには、雨乞いには黒馬を、雨止めには白馬や赤馬を奉ったといいます。
その後、生きた馬に代わって、馬をかたどったものや、馬の絵を描いた板を納めるようになったとされます。
これが、現在の「絵馬」につながりました。
丹生川上神社は、絵馬の発祥を伝える神社の一つなのです。
おもしろいですよね。
雨の中でも、三社を巡ってよかった
丹生川上神社の中社・上社・下社。
同じ名前のお宮でも、夢淵や東の瀧がある中社、高台に鎮まる上社、長い階段と神馬が印象的な下社と、それぞれ違った魅力がありました。
土砂降りの中、山道を移動しながらの参拝は、正直なところ大変でした。
それでも、三社ともお参りできてよかったです。
雨を司る神様のお宮だと思うと、こういう雰囲気も悪くないなと感じました。
伊勢・奈良の旅、2日目も無事に終了です。
翌日は橿原や飛鳥へ。日本の始まりをたどる旅は、まだまだ続きます。

