昨年の夏、長野県にある諏訪大社へ参拝してきました。
諏訪大社は、全国に約2500社あるとされる諏訪神社の総本社です。
諏訪といえば、諏訪湖の花火大会も有名ですね。毎年、終戦の日である8月15日に開催される花火大会は、国内最大規模の花火大会として知られています。
今回は、そんな諏訪大社の四社参りをしてきました。
諏訪大社は4つのお宮がある
初めて諏訪大社を訪れる人が、まず迷うのがここではないでしょうか。
Googleマップで「諏訪大社」と検索すると、複数のお宮が出てきます。
「結局、どこに行けばいいの?」
神社ではよくあることですが、諏訪大社の場合は少し特殊です。
実は、諏訪大社には4つのお宮があります。
諏訪湖を挟んで、
- 北側に「春宮」
- 北側に「秋宮」
- 南側に「前宮」
- 南側に「本宮」
があります。

この4つのお宮すべてを参拝することを、一般的に「諏訪大社四社参り」と呼びます。
参拝する順番については特に決まりがないようなので、今回は、
春宮 → 秋宮 → 前宮 → 本宮
の順番で参拝しました。
まずは諏訪大社・春宮へ
最初に向かったのは春宮です。
岡谷インターから車で約10分ほどで到着しました。



春宮には、一般的な神社で見られるような御本殿がありません。
拝殿の奥にある杉の木が御神体として祀られています。
このように、建物そのものではなく、自然物を神聖な存在として祀るところに、諏訪大社の大きな特徴があります。
春宮から約10分、諏訪大社・秋宮へ
次に向かったのは秋宮。
春宮から車で約10分ほどです。



秋宮も春宮と同じく、御本殿はありません。
拝殿の奥にあるイチイの木が御神体となっています。
春宮と秋宮では、自然そのものを神聖なものとして祀る、古い信仰の形を見ることができます。
立石公園から諏訪湖を一望
前宮へ向かう途中、少し寄り道をしました。
立ち寄ったのは立石公園。
映画『君の名は。』の舞台としても知られている場所で、諏訪湖を一望できるビューポイントです。

諏訪大社を巡る際には、少し足を延ばして立ち寄ってみるのもおすすめです。
諏訪大社・前宮|個人的に一番好きなお宮
続いて前宮へ。

前宮は車道から少し離れていることもあり、春宮や秋宮とはまた違った静けさがあります。
周囲は木々に囲まれ、すぐそばには清流が流れています。


そして、諏訪大社の四社の中でも特徴的なのが、御本殿があるのは前宮だけということです。
自然の中に神社があるという雰囲気がとても強く、個人的には4つのお宮の中で前宮が一番お気に入りでした。
最後は諏訪大社・本宮へ
四社参りの最後に訪れたのが本宮です。
前宮からは車で約10分ほど。


本宮の参道には、食事処やお土産屋さんなどが並んでいます。
諏訪大社を訪れた際には、参拝だけでなく、こうした周辺のお店を散策するのも楽しいところです。
諏訪大社には「御本殿」がない?

諏訪大社を巡っていて、少し不思議に感じることがあります。
それは、御本殿がないお宮が多いことです。(御本殿があるのは前宮のみ)
本宮にも一般的な神社のような御本殿はなく、拝殿のみがあります。
そして、その背後にある守屋山が神聖な存在とされています。
山そのものを信仰の対象とする形は、日本の最も古い信仰の形だとされています。
こうした信仰の対象となる山は、一般に「神奈備」と呼ばれます。
有名な例としては、奈良県の大神神社があります。
大神神社では、背後にある三輪山そのものが御神体として信仰されています。
こうして比較してみると、諏訪大社の信仰が非常に古い形を残していることが感じられます。


私が神社巡りで楽しみにしている「古事記とのつながり」
ここから少し話が変わります。
私が神社を巡るときに楽しみにしているのが、「神話、特に古事記とのつながり」です。
古事記は、日本最古の歴史書の一つ。
日本の神々や国の成り立ちが、物語形式で描かれています。
「古事記」と聞くと、なんとなく難しそうなイメージがありますよね。
でも、実際に読んでみると、かなり人間臭い話が出てきます。
神様同士の争い、恋愛、結婚、裏切り、権力争い……。
「これ、本当に日本最古級の歴史書なの?」
と思うような話も少なくありません。
だからこそ、私は古事記をもっと気楽に楽しんでいいものだと思っています。
私が尊敬している方も「少年ジャンプのような感覚で楽しんでいい」とおっしゃっていました。
神社を訪れる前に少し神話を知っておくだけで、
「なるほど、この神様はここにつながっているのか」
「この神社にも、こんな物語があったのか」
と、参拝の楽しみ方が一気に変わります。
諏訪大社の御祭神「建御名方神」
さて、ここで諏訪大社に話を戻します。
諏訪大社にお祀りされている代表的な神様が、建御名方神です。
この神様は、古事記にも登場します。
そして、ここからが非常に面白いところです。
出雲大社と諏訪大社の意外なつながり
島根県には、縁結びで有名な出雲大社があります。

出雲大社にお祀りされているのは、大国主神です
そして古事記の物語では、諏訪大社の建御名方神は、大国主神の子として登場します。
つまり、
出雲大社と諏訪大社には、古事記を通じた深いつながりがある
というわけです。
実際に両社を訪れてみると、どこか似た雰囲気を感じる部分もあります。
大きなしめ縄も印象的ですね。
では、なぜ出雲の神様が、遠く離れた長野県の諏訪に祀られているのでしょうか。
その答えが、古事記に登場する「国譲り」の物語です。
古事記の「国譲り」と建御名方神
古事記に登場する神々は、大きく分けると、
天津神と国津神
に分けて考えることができます。
簡単にいうと、
天津神・・・天上の世界に関係する神
国津神・・・地上の世界に関係する神
というイメージです。
その中で、天津神側の中心的な神様が天照大御神。
一方、国津神を代表する神様が大国主神です。
古事記の「国譲り」では、天照大御神が大国主神に対して、地上の国を譲るように交渉を始めます。
しかし、最初から簡単に話がまとまったわけではありません。
国譲りの交渉にやってきた武甕槌神
天照大御神は、使者を出して大国主神と交渉させます。
しかし、なかなか話は進みません。
最初に二人ほど使者を出したのですが、出雲の住み心地があまりに良かったのか、大国主神に言いくるめられてしまったのか、何年経っても帰ってこない。
そこで最後に遣わされたのが、武甕槌神です。
武甕槌神は、茨城県の鹿島神宮にお祀りされている神様です。

武甕槌神は出雲へ向かい、大国主神に国を譲るよう交渉します。
すると大国主神は、
「自分一人では決められない。二人の息子に聞いてほしい」
と答えます。
そこでまず交渉に向かったのが、長男の事代主神です。
美保神社に祀られる事代主神
事代主神は、島根県東部にある美保神社に祀られている神様です。
美保神社は、全国のえびす社の総本社としても知られています。



事代主神は国譲りの話を受け入れます。
その後、船を青柴垣に変えて、その中に籠もったと古事記には描かれています。
美保神社では現在でも、この神話に由来する「青柴垣神事」が毎年4月に行われています。
神話の世界が、現在の神社の祭礼として残っているわけです。
こういうところが、神社巡りの面白いところです。
建御名方神が諏訪へ逃げた理由
そして、次に登場するのが、今回の主役である建御名方神です。
建御名方神は、事代主神とは違い、国譲りに激しく抵抗します。
古事記では、建御名方神が1000人がかりでやっと引けるほどの大きな岩を持ち上げて現れ、武甕槌神に力比べを挑んだと描かれています。
ところが、武甕槌神にはまったく歯が立ちません。
そして建御名方神は逃げます。
逃げ続け、最終的にたどり着いたのが諏訪の地でした。
そこで追いつかれた建御名方神は、
「どうか殺さないでください。この地から出ないことを約束します。そして、父と兄の言うことを聞き、この国をお譲りします」
と約束を交わし、国譲りを受け入れます。
そして、出雲側は国を譲る条件として大きな社を建ててもらうことにしました。
この大きな社こそが、出雲大社です。
すべてが繋がっておもしろいですよね。

神社は「知ってから行く」と、もっと面白い
神話を知ったうえで実際の神社を訪れると、
「この神様は、ここから来たのか」
「この神社と、あの神社がつながっているのか」
という発見があります。
これが、私が神社巡りが好きな理由の一つです。
「うちの地元には何もない」
と思っている人ほど、地元の神社を調べてみると面白いかもしれません。
神社は、ただ参拝するだけでももちろんいい。
でも、その神社に祀られている神様や、古事記・日本書紀に登場する神話、周辺の神社とのつながりを知ってから訪れると、景色が少し違って見えてきます。
まとめ|諏訪大社四社参りを終えて
今回は、
春宮 → 秋宮 → 前宮 → 本宮
の順番で、諏訪大社の四社を巡りました。
それぞれのお宮に異なる雰囲気があり、特に自然と一体になったような前宮の境内は、とても印象に残っています。
そして何より面白かったのが、諏訪大社を古事記の神話から見ることでした。
諏訪大社の建御名方神が、出雲大社の大国主神の子として登場し、「国譲り」の物語を経て諏訪の地へたどり着く。
こうした背景を知っていると、諏訪大社への参拝が単なる観光ではなく、日本神話の続きを実際の場所で感じる旅になります。
諏訪大社を訪れる際には、ぜひ四社すべてを巡ってみてください。
そして、時間があれば古事記の「国譲り」の物語にも少し目を通してから参拝することをおすすめします。
神話を知ってから訪れると、諏訪大社の見え方がきっと変わると思います。
とても素敵なお宮に参拝させていただき、ありがとうございました。
諏訪大社 四社|基本情報

