【大会参加レポ】第10回神戸六甲縦走トレイルラン2021大会に参加してきました。

こんにちは、浅野です。

第10回神戸六甲縦走トレイルラン2021大会に参加してきました。まずこのコロナ渦において開催してくださった運営の方々に心から感謝しています。ありがとうございました。

本来は昨年に開催予定でしたが、コロナの影響で1年延期となっていました。しかし、今年になっても様々な大会が見送られているので、今年もダメかなぁと思っていたところ、まさかの開催が決定。約1年半ぶりの大会なのでとても嬉しかったです。

まだ筋肉痛で脚がプルプルしていますが、この素晴らしい大会を振り返りたいと思います。また、後半には僕個人が考えた戦略も書きましたので、本記事が今後参加される選手の方々の参考になれば幸いです。

目次

レースの舞台は神戸の六甲山

レースの舞台は神戸六甲山系の山々。須磨浦公園から有馬温泉までの38kmを制限時間内に走破するレースです。累積標高は2,400m。激しいアップダウンを繰り返しながら、約10ピーク以上の山々を駆け抜けます。

 

制限時間がなかなかシビアなレース

この大会では、4箇所のエイドが設けられています。鵯越駅(ひよどりごええき)、大龍寺、掬星台、記念碑台の4箇所です。最後の記念碑台に16:30に到着していなければ、そこで失格となります。

密集を避けるためにスタートはウェーブ形式となっています。先発組と後発組に分かれており、その間が1時間ほど空いています。さらに先発組が8:30、8:40、8:50、後発組が9:30、9:40、9:50というように、10分間隔でそれぞれスタートします。

僕は最終の9:50スタート。「よっしゃ!早起きしなくて良いんだー!」くらいに思っていたのですが、よくよく考えたら、先発組も後発組も制限時間は同じなんですよね。

つまり「スタート時間が遅い選手= 遅くスタートしても制限時間に間に合う選手 = 速く走れる選手」ということ。後発組の最終枠って「最速組」ということです…

僕は、普段からトレイルランニングをしているので、標準コースタイムと比較した自分のスピードはだいたい把握しています。が、単純計算しても、関門に間に合うか間に合わないかくらいの計算だったんです。

過去の参加者のブログを読んでいても、サブ3.5の人でもギリギリだったとか、5分間に合わなかったとか、、、😰←だんだんこんな顔になってくるわけですよw

出場の通知ハガキが届いた時「あ、これ終わったわ…」って感じでした。エイドで休む時間どころか、トイレで用を足す時間すらないとw

レーススタート

なんと前日はまさかの大雨。夜中は雷も鳴り響いていました。さすが雨男です。海外旅行も花火大会もデートも、だいたい雨。

須磨浦公園に到着。雨は上がり、時折青空も広がっていました。受付を済ませ、ストレッチと装備の最終確認。

9:50にレーススタート。スタート直後、鉢伏山までの激坂が現れます。僕はここは歩きました。というのも、ここで走ってしまうと後半で脚が持たないことが分かっていたからです。お陰で最後尾(笑) 後ろを振り返ると誰一人いませんでしたw

けど焦らない。我慢です。マイペース遵守で「あとでいくらでもかっ飛ばせるから、ここは我慢だ」と自分に言い聞かせました。これが後に正しかったことが証明されます。

旗振山、鉄拐山を越えていきます。コース前半は住宅街を抜けるので「ウォーキング指定区間」が設けられています。

高倉会館のピーコックを超えると、栂尾山までの階段が現れます。ここがかなりキツイ。キツいけど、綺麗なフォームを意識して丁寧に登っていきます。登り切ると、遠くには明石海峡大橋と淡路島が綺麗に見えました。

須磨アルプスの横尾山を超えると馬の背が現れます。見た目ほど危険は感じませんが、ウォーキング指定エリアになっているので、ゆっくり進みます。

須磨アルプスを過ぎ、横尾・妙法寺の住宅街を超えると、いよいよ最初の難関である高取山の急登に差し掛かります。昔、山頂で蜂の大群に追いかけられた記憶がw

基本的に上りは速過ぎず、遅過ぎずのペースで登りました。マイペースよりも少しだけ速いくらいの速度。というのもここでガシガシ登ってしまうと、息が切れるのもそうですが、後半戦で使える「脚」が無くなってしまうから。あくまで綺麗なフォームを意識して登りました。

高取山山頂付近は「神聖な区域」ということで、ウォーキング指定エリアになっています。フラットな区間なので走りたい気持ちもありましたが、歩くことで心拍数が落ち着くので、後々走りやすくなると感じました。

丸山市街を抜け、第1エイドの「鵯越駅(ひよどりごええき)」に到着。

関門時間が心配なので、エイドではゆっくりはしません。補給食をもぐもぐしながら、フラスク(ボトル)に給水します。少しでも時間を節約します。今回は「おにぎり」を持参しました。その理由は後述します。

登山をされている方なら分かると思いますが、休憩の時間ってあっという間に過ぎていくんですよね。山頂でゆっくり休んでいたら、1時間なんてあっという間です。なので、エイドでは5分なら5分と決めて時間を厳守すると、だらだら時間が過ぎていくのを防ぐことができます。

さて、鈴蘭台下水処理蔵を越えると、いよいよ菊水山に差し掛かります。急登で有名な山です。ここで「第1ロケット発射」と決めていました。といっても、スピードを出すわけではありません。心のロケットであり、踏ん張りを効かせるという意味です。

予想通りにキツいわけですが、あくまでマイペース。距離的にもまだ約20km地点だし、先は長いです。ここでエネルギーをすべて使い切らないように、自分の中できちんと余力を残して登ります(かと言って限界を感じるくらいキツいんですけどねw)

菊水山山頂に到着。登り切ると綺麗な景色が開けます。ベンチがたくさんあって休憩している選手も大勢います。が、ここはエイドではないのでそのままスルー。補給食だけ取り出してモグモグしながら進みます。

一旦下って、天王吊り橋を渡ります。前の選手は、プロトレイルランナーの小寺選手。カッコ良くてつい写真を撮ってしまいました。盗撮すいません(汗)あまりに速過ぎて、鍋蓋山の急登に差し掛かった瞬間、2秒くらいで視界から消えていきましたw

キツい鍋蓋山を越えて、第2エイドの大龍寺(23km地点)に到着。この地点で13:10なので、スタートから3時間20分かかりました。

最終関門の第4エイド(34km地点)を16:30に通過しなければならないので残り3時間20分ほど。時間的には間に合いそうですが、何があるか分かりませんし、この先もキツい登りが続きます。

そして、天候が崩れはじめ、大雨も降ってきました。2個目のおにぎりを頬張り、給水を済ませて出発。先を急ぎます。

いよいよ、今大会で一番キツい摩耶山(まやさん)への登りに差し掛かります。ここで第2ロケットの発射です。ここを乗り越えば、あとは大きな登りはありません。ただ、まだ15kmほどあるので、余力はきちんと残しておきます。

時間的にも距離的にも、さすがに選手たちにも疲労が見え始め、脚を止めてしまう選手もちらほら。ちょうどハンガーノック(エネルギー切れ)が起こり始める地点だと思うんですね。これをマラソンでは「30kmの壁」といいますが、僕は25kmくらいから現れる兆候があることが経験的に分かっています。

なので、できるだけエネルギー切れを起こさないように、「大きな補給(おにぎり)」「小さな補給(チョコや羊羹)」を丁寧に繰り返しました。

やっとの想いで摩耶山に登り切ると、第3エイドの掬星台(29km地点)に到着。エイドは景色の見えるテラスではなく、道中に設けられていました。到着時刻は14:15。最終エイドの記念碑台まで残り5kmなので、かなり良いペースで進んできたことが分かりました。

ここから先は激しいアップはありませんが、長くてダラーーっとした道路が続きます。個人的にはこれが一番キツいw もちろんアップもキツいんですが、硬いアスファルトはかなり足にきます。あと、先が見えてしまうツラさ(笑)

登山道は先が見えないのでそれもまたツラいんですが、道路のように先が見えてしまうのもまたツラい。フラットなのに傾斜がついているように感じたりw  僕としては第3 ~ 第4エイド間が一番キツかったです。

神戸の美しい街並みを眺めながら第4エイドの記念碑台(34km地点)に到着。時刻は15:03でした。最終関門を突破し、気持ち的にはかなりラクになりました。最後のピークである六甲山頂を目指します。

六甲ガーデンテラスを越え、車道と登山道を交互に走りながら進みます。六甲山山頂はすぐそこかと思いきや意外と距離がありました。

15:55 六甲山頂に到着。ここで朝の晴天がウソかのような雨風に襲われます。秒で撤収(笑)

ここから先は、有馬温泉へと続く魚屋道(ととやみち)という登山道を下っていきます。幸い木々に覆われている道だったので、雨風の影響を受けずに済みました。あと5分遅かったらずぶ濡れになっていたと思います。

「事故は下山で起こる」という教訓があります。地面は濡れ、大きな石がゴロゴロしています。脚の筋肉は疲労し、けれどスピードは出ます。また、”あとは下るだけ”という気の緩みもあります。最後の最後で怪我だけはしないように注意しました。とか言いつつ、足をグネっとやったというw 致命傷にならずに済みました。

16:27 無事にゴールしました。記録は6時間38分7秒

ゴールするどころか、最終関門に間に合うかどうかすら不安だったので、自分の中では満足のいく結果となりました。特に大きなトラブルもなく、また事前に立てた戦略もうまく行ったので、その点でも大変満足です。

個人的な戦略

今回のレースにあたって、僕が個人的に実行した戦略です。

最初は弱火で料理しよう作戦

序盤はスピードを極力抑えて走るようにしました。トレイルランニングのような長距離レースでは、最初に飛ばしすぎると後半で脚が持たないからです。

そしてここがポイントですが、一番初めに飛ばしてしまうと、その後もずっとツラい状態が続くということ。「その後ゆっくり走れば、回復するんじゃないの?」と思いがちですが、今回のようなアップダウンの激しいコースでは、なかなか思い通りに回復しないんですよね。

僕はこれを料理に例えています。例えば、肉をはじめから強火で焼いてしまうと、表面が焦げてしまいます。その後、弱火で焼こうと思っても、その焦げによって肉の表面がコーティングされてしまい、中まで火が通りにくくなってしまう。むしろ、焦げた部分がさらに焦げてしまう。

筋肉も同じ。一度全力を出してしまうと筋肉が疲労してしまい、その後、ペースを落としてもなかなか回復しないんです。これが生理学的に正しいかどうかは別として、僕個人の体感としてそう感じています。

今回のレースは、スタート直後から須磨浦公園内の激坂があります。僕は「ここで走ってしまうと絶対に焼け焦げてしまう」と分かっていました。なので、思い切って歩きました。最後尾であっても気にしませんでした(ちょっと恥ずかしかったですがw)「我慢するんだ。あとでいくらでも飛ばせるから」と自分に必死に言い聞かせました。その甲斐あって、終盤までしっかり脚を残すことができました。

スタート直後は気持ちも高ぶっていますし、どうしても周りのペースに合わせがちになってしまいます。しかし、いかに自分の戦略通りに走れるか、そして、強い意志を持ってマイペースを守れるかが、最後まで脚を持たせるコツだと感じました。

多段型ロケット作戦

文中でもお伝えしましたが、今回はロケットを4発ほど搭載してきました。これは肉体的な意味でもありますが、心理的な意味でもあります。

1発目は菊水山への急登、2発目は摩耶山への急登、3発目は記念碑台までのダラーっとした登り坂で発射するようにしました。4発目は予備です。これを「多段型ロケット作戦」と名付けています。

事前にコースマップでキツいポイントは把握していたので、ロケットを発射する「踏ん張りポイント」を細分化しておきました。「この次もまだ急登があるんだから、今は1/4くらいの出力で登るんだ」という感じです。

実際には限りなくキツい状態で登っているわけですが、このように細分化しておくと心理的に多少はラクになります。”多少は”ですけど(笑)

「大きな補給」と「小さな補給」作戦

今回初めて試みたのが、補給食をおにぎりにする作戦です。一般的にレースではエナジージェルのような即効性のあるものが補給食として用いられます。

あくまで僕個人の見解ですが、過去の登山やレースで、エナジージェルは即効性がある反面、持久性に欠けると感じていました。栄養学の観点からも、血糖値は上昇が速い分、下降も速いことが分かっています。なので、継ぎ足し継ぎ足し補給すればいいのですが、エナジージェルって結構高いんですよねw (ケチ)

あと、僕の場合は空腹感にめっぽう弱いので、胃袋になにか入ってる感じがしないと力が出ないのです。顔が濡れたアンパンマンみたいな感じです。ジェルは筋肉には栄養が届くけれど、胃袋が満たされている感じがしないので、力が出ないのです。(あくまで僕の場合です)

そこで、たどり着いたのがおにぎり。炭水化物(ガソリン)の塊なのはもちろん、腹持ちが良い。普段の登山でも、山小屋でカレーやうどんを食べると、驚くほど体力が回復することが体験的に分かっていたのです。

もちろん、ジェルの何倍も重いので登りがキツくなるのは覚悟していました。ですが、多少重くても空腹によるペースダウンと天秤にかけた時に、結果的に早くゴールにたどり着けるんじゃないか?と考えていたのです。

そしてこれが大正解。エネルギー切れ(ハンガーノック)に悩まされることなく、最後まで体が動きました。「おにぎりスゲー」って声に出しながら走ってました。

3つ持っていき、スタートの1時間前、第1エイド、第2エイドで食べました。重いので前半に食べ切るようにしました。おにぎりを「大きな補給」として、その間はスポーツ羊羹やチョコレートなどで、火が消えないように「小さな補給」をしながら走りました。

あと、おにぎりは胃袋的に少し重いので、少しでも不快感をなくすためにきちんと咀嚼しました。口の中でおかゆ状にするイメージです。

栄養学的に、多糖類と単糖類を交互に摂ることが果たして運動効率を高めるのかどうかは疑問ですが、これはもう日頃の個人の感覚に頼るしかないと思っています。

最後まで一貫したフォームを保つこと

長距離レースでは一歩一歩の積み重ねが大切だと考えています。効率の悪いフォームで走れば筋肉が疲労し、筋肉が疲労すると、余計にフォームが崩れるという悪循環が起こるからです。

なので、どんなにツラくても正しいフォームをゴールまで貫くことを意識しました。

特に意識したのは、重心の真下にしっかり足を置くこと。重力のベクトルが垂直になるので、余計なエネルギーを使わなくて済むからです。カラダを少し前に倒し、足があとからついてくるようなイメージです。

なにも意識しないとこうなります。足が先行する形となるので、体全体を水平方向に移動させる必要がある。そうすると必要以上のエネルギーを使うことになります。

また、フロントスクワットや空気椅子のような形になるので「大腿四頭筋(前ももの筋肉)」へのダメージが増えます。大腿四頭筋はブレーキングマッスルなので、下り局面で体を支えるのに特に重要な筋肉です。前半戦で使い過ぎれば、後半の下りで転倒のリスクも高まります。(この辺りの話は、山本先生の著書に詳しく書かれています。とても分かりやすく書かれているので、快適に登山を楽しみたい方にオススメの一冊です)

そして、早く登ろうとすると、必ずと言っていいほど足が先行してしまうので、綺麗なフォームを保てる範囲のスピードで登るようにしています。あとは、大きな段差がある時は無理をしません。大股になり、足が前に出てしまうからです。歩数が増えたとしても、小さな段差や傾斜を見つけて、そこに足を置いてから上がるようにしています。

「一歩一歩を大切に」を意識して登りました。

あきらめないこと

一番大切なことです。レース中は、あまりにキツいので「なんで俺こんなキツいことやってんだろ」「やっぱ山向いてないのかな」「もうしばらくレース出るのやめようかな」など、色々ネガティヴな感情が湧いてきます。もちろんレースは楽しいけれど、ラクじゃありません。

でも、キツいのって自分だけじゃないんですよね。いま目の前を登っている人もキツいはずだし、色々な想いを抱えて登っているはずなんです。じゃなかったら参加しないはずですから。

僕の場合は「弱い自分の殻を破るため」です。昔から持久力系スポーツが苦手で、事あるたびに「走るの苦手なんですよ」と言い訳を重ねてきた弱い自分と決別するために、必ずゴールまでたどり着くと決めていました。

また、亡くした飼い猫、そして以前登山中に事故で命を落とされた学生の子。彼らに対して恥ずかしくない走りをすると固く誓っていました。

まだまだありますが大きいのはこの2つです。心が折れそうになった時、なにか自分の中に確固たる信念や信条があると背中を強く押してくれます。筋力や体力も重要ですが、やはり最後は精神力だと思っています。

まとめ

休日に一人で山をのんびり走るのも楽しいですが、選手たちとお互いに励まし合いながら同じゴールを目指すレースは本当に楽しいです。

そして、六甲縦走はいつ挑戦してもキツいけど、いつ挑戦しても美しいコースです。

応援してくださった方々、一緒にレースを走ってくださった方々、そして運営の方々に心から感謝いたします。またどこかのレースでお会いできるのを楽しみにしています!

目次